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2015年8月31日 (月)

トッド師の各国評

 台風で7時間におよび停車中の彦根からの電車内(前回ブログ参照)で僕を救ったのは急遽で済ませた「彦根丼」の夕食と、駅前で購入したエマニュエル・トッド「”ドイツ帝国”が世界を破滅させる」(文春新書)だった。
     7時間かけ熟読(笑)。
   
     トッド師はフランスの歴史人口学者で「ソ連崩壊」「米国発の金融危機」「アラブの春」を予言した人物として知られ、同書はそのインタビュー集で     ある。
   
     全体を流れる主題は
     ①EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している
     ②こうした「(冷戦終結と欧州統合が生み出した)”ドイツ帝国”は人口・経済ともに米国をしのぐものになっている
     ③母国フランスはそれにただ従属するだけ・・・ああ何と情けない
     ④この先は「欧州の保護主義的再編成を目指し」「主要銀行を国有化し」「政府債務をデフォルトしてゼロからやり直す」しかない、といったお話で     ある。
   
     が、そこにちりばめられた各国評がなかなか鋭くも面白かったので、以下抜粋する。
   
   
     ロシア
   
    ・ロシア脅威論は西洋が病んでいる証です。その人口はわずか1億4千万人にすぎず、国として立ち直ったのは確かだけれども、再び支配的な国家になるとは誰も想像できません。ロシアの力は基本的に防衛的なものです。     ちょうど日本の人口に匹敵する程度の人口では、あの巨大な領土を保全していくだけでも容易なことではありません。
   
    ・ロシアは一つの大きな現状維持勢力であり、彼らが望んでいるのは、平和と安全。自国の復興を完遂するためにロシアはそれらを必要としています。     西ヨーロッパの人々が失うものをたくさん持っているのに較べ、ロシアの人たちは多くの被害をもたらした経済的衰退の年月の後、やっと「一息つく」     ことができ始めたばかりです。死亡率の傾向が逆転し、経済が安定し、農業が伸び始めてきた。彼らはコントロールの利かない好戦的妄想に突如陥るような状態にはありません。
   
    ・ウクライナ問題で彼らは西側の制裁を恐れません。が、中部ウクライナで憎まれることは望みません。ロシア指導層の外交的観点は非常にシンプルで、ウクライナにNATOの基地を望まない。そんなところに基地を作られたのでは、バルト三国とポーランドからなる包囲網が一層強化されてしまうという、ただそれだけのことなのです。
     
   
   
     アメリカ
   
    ・アメリカシステムとはユーラシア大陸の2つの大きな産業国家、すなわち日本とドイツをアメ         リカがコントロールすることでした。ただしそれはアメリカ自身が産業規模において明確に優越しているという仮定の下でのみ機能します。アメリカの工業生産高は1928年に世界の45%、1945年にも同レベルだったが、今では17・5%に過ぎません。配下の     国々がそれぞれの地域でおこなう冒険的行動をもはやコントロールできず、むしろ是認しなければならない立場のアメリカは、それ自体として一つの問題となっています。
     
    ・ドイツについてはアメリカの軍事力がNATOをバルト海諸国やかつての共産主義諸国にまで拡大することにより、ドイツにまるまる一つの帝国を用意してしまいました。ウクライナ情勢について、アメリカは自らどこへ向かっているのかが分かっておらず、公言されにくい事実を言えば、今日アメリカはドイツに対するコントロールを失ってしまって、それが露見しないようにウクライナでドイツに追随しているのです。
   
    ・アジアでは(中国の台頭はもちろん)韓国が日本に対する恨み辛みのゆえに、アメリカの戦略的ライバルである中国と裏で共謀し始めています。
   
    ・エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近は全く論理的ですが、ここにアメリカにとってのもう1つのリスクがあります。
   
   
   
     ヨーロッパ
   
     非公式の空間「ドイツ圏」が構成されています。それはドイツに対する経済的依存度がほとんど絶対的といえるほどのレベルにある国々で構成さ     れています。
   
   
     グループ1
   
     ドイツ圏=ドイツ、オランダ、ベルギー、チェコ、オーストリア、スイス
      
 
      
         ドイツへの自主的隷属=フランス(笑)

   
   
     グループ2
     
     ①事実上の被支配国=イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなど南欧諸国
   
     ドイツがその隣接空間とフランスを伴って押しつける財政規律に対し何もできない、被支配地域です。弱小国は追い詰められ、自らの民主主義的シス     テムを奪われており、近年追い詰められたのがギリシャとイタリア・そして遠からずスペーンとポルトガルも同じ運命にあります。
     
     ②同=デンマーク、フィンランド
   
     デンマークはイギリスとの絆を持ちつつ、西の方に目を向けており、ロシアのことをさほど気に病んではいません。
     対してフィンランドはロシアに近い。彼らにとって自分たちを植民地化しなねない強国は実はスウェーデンだからです。
   
     ③ロシア嫌いの衛星国=ポーランド、スウェーデン、バルト国
   
     彼らはロシアを破滅させるという夢を持ち、ドイツ帝国に進んで参加することでその夢を信じることができます。
   
     ④併合途上=ウクライナ
   
     併合途上です。ウクライナは組織を組む能力がなく、前国家的状態にありますが、4500万の労働人口はソ連時代からの教育水準の高さとあいまっ     て、ドイツにとって例外的な獲物となるでしょう。
     ドイツのシステムは(東西ドイツにみるように)安い労働を用いて自らの産業システムを再編することによって成り立ちます。初期にはその対象は     ポーラン     ド、チェコ、ハンガリーでした。
   
   
     ・・・ここまでが「ドイツ帝国」
   
   
     グループ3
   
     ①脱途上=イギリス、ハンガリー
   
    ・大陸ヨーロッパのシステムへの加入は、基本的にイギリス人にとってぞっとするものです。ある種のフランス人たちのように、ドイツ人に従う習慣も     ありません。     彼らにとってはより権威的ではないもう一つの別世界「英語圏」があり、アメリカ、カナダや旧イギリス植民地の世界に属しています。イ     ギリス人はより強いわけでも、より優れているわけでもありませんが、背後にアメリカ合衆国を持っています。
   
    ・東ヨーロッパではハンガリーだけがソ連の圧力に立ち向かった歴史がある一方、ロシア支配の下での自らの歴史を誇ることもできるのです。イギリス     同様離脱予備軍とみます。
     ちなみにハンガリーではやったある冗談は、東ヨーロッパ諸国の差異への理解を助けます。
     「1956年にハンガリー人はポーランド人のように行動した。ポーランド人はチェコ人のように行動した。チェコ人は豚のように行動した」。
   
     ②トルコ
   
     EU諸国民はトルコの加入を望んでいません。
     しかしそれよりはるかに重要なことは、トルコ人がもはやEUのような監獄に入ることを欲していないということです。
   
   
     中国
   
    ・2008年の危機の出発点は中国その他の国々が低賃金のおかげで世界の生産のますます大きな部分を占有して、それが富裕な国の中での所得の抑制、従って需要の不足を生み出したというところにありました。その結果、世界の精算は増大するのに、賃金は低下していったのです。
   
    ・「ドイツ帝国」は最初はもっぱら経済的でしたが、今ではすでに政治的なものになり、もう一つの世界的な輸出大国である中国と意思を通じ併せ始めています。メルケルは2005年の首相就任以来、ほとんど毎年のように中国を訪問していますが、日本には2015年に、7年ぶりに来ただけです     (2015     年の訪日目的は「歴史認識問題」をめぐり発言し中国に恩を売るとともに、ロシアへの接近を図りたい安倍政権をけん制するためだったという見方がある)。
   
    ・しかし、中国は今、恐らく経済成長の瓦解と大きな危機の寸前にあり     ます。中国は「西洋資本主義の利益計算の道具」で、「西洋の企業からしてみれば目にしたこともないような利益をもたらしてくれる国」で、「西洋の     資本主義にとって中国を肯定的に言う事には利益がある」が、「共産党の指導者たちは決して主人ではなく」、「彼ら自身も自分ではコントロールでき     ない力の支配下」にあります。従って経済面で中国が単独で覇権を握ることはないと見ます。
   
    ・中国が日米との戦争することは不可能です。理由は米国の核兵器の存     在と中国の軍事技術の水準の低さです。この地域の最近の歴史は、そこに巨大な海事力を有する二大国、すなわちアメリカと日本が存在していたという     ことです。太平洋戦争は空母を使いこなし、空母を発明さえした二大国間の闘いだったからです。もし中国軍が海洋に出て行き、勢力を拡大しようとすれば、海空戦を経験した世界でただ二つの国、日本とアメリカの同盟に向き合わねばならない、ということです。まったく馬鹿げたことです!
   
   
   
     追記
   
     同書ではドイツと日本の共通点についても何箇所かで述べられている。
         老爺心ながら、この人が各民族の「血液型」について学べば、より鋭い世界分析が可能になると思う。

      

      
 注記(括弧内は血液型シェアのTOPと割合)
      

      
 アメリカ白人(O:44・7%)
      
 アメリカ黒人(O:46・0%)
      
 イギリス人 (O:46・4%)
      
 フランス人 (O:43・2%)
      
 中国人   (O:36・3%)
      

      
 ドイツ人  (A:43・0%)
      
 日本人   (A:40・0%)
      

      
 インド人  (B:41・2%)・・・笑

   

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コメント

A big thank you for your article.Really thank you! Cool. efbeecddackf

投稿: Johne32 | 2015年9月12日 (土) 16時26分

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