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2015年7月23日 (木)

5千m日本記録(13分08秒)にくらくら

 早大競走部の後輩、大迫傑君がベルギーで、5千m13分08秒40の日本記録を樹立した。

 のに・・・あまりきちんと報道されていないようなのが少し残念だ。

 もちろん今や世界のトップクラスは12分台なので、そうした意味では特筆すべきものではなかった、のかも知れない。

 しかしそうした事情は100m9秒台でも同じこと。

 結局、各国以上に長距離ファンが多いこの国においてすら、この数字が(特に情報を伝える立場にある人々にとって)あまりピンと来るものではなかった、ということなのだろう。

 もちろん、ファンやそうした方々なら、テレビに映る男子選手の「1キロ3分」というペースが悪くないものであること(理由は後述)や、「5千メートル13分台」(今の早稲田なら7名)が大学男子の一流選手、あるいは「超高校級」と呼ばれる選手を指すことなどを知っておられるに違いない。

 が、今回の日本記録を、そうした話の延長線上にあるもの(言い換えれば「鬚が生えた程度の存在」)として捉えてはいけないのではないか?

 と思うので、少し解説させていただきたい。

 まず。

 中学校でやった、1500m持久走を思い出していただきたい。

 それを100m20秒ペース=5分で走り切れる奴は大抵、クラスに一人いるかいないかだろう。

 お勉強偏差値なら将来、少なくとも国公立大や有名私大くらいは目指せそうな素材。

 だが、陸上部員としては少々微妙なレベルだ。野球なら球速100キロ程度のピッチャーに似たイメージかも知れない。

 市の中学駅伝大会で下位を走っているチームなら多分、この記録でメンバーに入れる所もあるだろう。

 が、仮にそれと同じペースで5千メートルまで走っても、16分40秒。高校なら地区により県大会出場もあり得るかも知れないが、周回遅れ覚悟という感じになる。

 成人になり同じペースでハーフマラソンを走れれば70分。市民ランナーとしてなら相当速いが、箱根駅伝なら大ブレーキである。

 もしこのペースでマラソンを走り切れれば2時間20分。万が一、走れる距離がそこまで伸びても女子の日本記録に及ばない。

 次に。

 業界的によく言われるスピードの目安は、先に出た「1キロ3分」である。

 「キロ3」×1・5=1500mを4分30秒というのだけでも結構速いという点は、多くの方々にイメージいただけるのではないかと想う。

 中学ならそれだけで全国全ての学校で戦力とみなされ、市レベルならトラック種目でも全く恥ずかしくない感じになる。

 球速なら115キロ。

 もちろん上には上のグループがある。

 「キロ3」で走れる距離が延び、中学男子で倍の3千mが9分なら、その子はトラックの全国大会出場、高校5千mが15分なら全国高校駅伝メンバー、大学1万が30分なら箱根駅伝メンバーを、努力次第では狙える感じになる(1万30分=今の早稲田なら20名くらいか?)。

 さらにその倍の距離、20キロを60分ペースで走れるランナーを10人揃えれば、箱根駅伝でも上位争いにからめる(自己記録的には今の早稲田のなら9-12名がそのレベル。ただし「試合当日」ベストコンディションに近い選手がばっちり10名以上そろうかというのは、またもう1つ別の話)。

 ともあれ、20キロ60分=球速なら135-140キロという感じか? 

 ついでに言えば、もし、フルマラソンをそのペースで走り切れれば、男子の日本記録(1億円!)に肉迫できる。

 言い換えれば、箱根のそこそこの選手がハーフマラソンをリレーしても、一人のマラソン一流選手に勝てるかどうか、という点こそがマラソン選手の真のスゴさと言える。

 (そうした持久系の話はまたの機会に)

 話戻。

 では・・・さらにペースアップがなされ、1500mが4分になったらどうだろう。

 100m16秒のペース・・・これで1500mを走りきるのだから、素人目には「天才」の領域に見える速さかも知れない。

 中学生でこのスピードで1500mを走り切ったのは歴代で10数名。自分の選手時代ならこのあたりが何とかインターハイ入賞を、また今なら運と努力次第でそれへの出場が狙えるラインであろう。

 ちなみに、(成人後あまり機会がなくなることもあり)実はそこそこ有名な男子長距離ランナーにも、1500m4分を切ったことがない選手はザラにいる。

 で、問題はここから。

 さすがに100m16秒(1500m4分)ペースとなると、それで5千mまで走り切れた日本人は歴代でも松宮・高岡・佐藤・竹澤など数名を数えるだけになってしまう。

 この、日本人が何名かしか達成したことのないペースは、球速なら150キロくらいに相当するのだろう。

 だが・・・その記録は何と(今回の記録より12秒も遅い)「13分20秒に過ぎない」のである。

 さて。

 陸上関係者の多くはもし今季日本人が100mで10秒を切っても、またマラソンで日本記録が出ることがあっても、さほど大きくは驚かないはずである。

 しかし、今回の大迫君の記録は人知れず(?)多くの人々に衝撃を与えた。

 なぜならそれは超一流含む日本の歴代長距離ランナー中99・99%が、体感的に「オレには絶対無理」と感じざるを得ない領域にあるものだからである。

 驚くなかれ、大迫君の13分08秒40の1500mペースは何と「3分56秒」。

 「4分ペース」とはトラック1周につき1秒「も」違う。

 これを3回繰り返し、そこからがあと500mの勝負となる。

 何だか、ちょっとくらくらしてきませんか・・・(笑)?

 3千mを軽く7分台で通過し、そこからさらにペースアップしなければ到達できないこの記録は、球速160キロ超を出す「12分台」選手には及ばないものの、どう見ても(世界と戦っていくことが夢ではなくなった)150キロ台後半の価値がある。

 日本人の野球やサッカー界の天才(例えば大谷や香川)が果たして世界でどこまで通用するか、というのと全く同じような話のはずである。

 にもかかわらず・・・(冒頭に戻る)

 ちなみに、大迫君は今年から日本の実業団所属を辞し「プロ選手」になっている。

 学生時代からいわゆる(長い距離を踏む)「駅伝練習」を好まず、4年時よりサラザールが指導しスピードを追及するナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加。それを悪くいう人もたくさんいたが、「駅伝練習」では絶対にこんなスピードは身につかなかっただろう。

 彼はあくまでも自分のスタイルにこだわり、今までのランナーにない世界への視野+アプローチ法を持ち、周囲を巻き込んで、しかも結果を出してきている。

 東京五輪での成果を得るためには、(野球・サッカーに限らず)各種目でこうした選手をどんどん増やしていくことが、「今に合う」方法かも知れない。

 

 おまけ

 レースの様子 http://suguruosako.com/?p=420

 箱根駅伝三冠(大学1年)時の1区激走直後のショット(W2区選手待機所:妻HPより)

Photo Photo_2

 (当時の靴はナイキじゃナイキが・・・笑)

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