造るだけじゃ駄目
国の「新直轄道路」として近く開通する予定の高速道路「姫路ー鳥取線」関係のミニ・シンポジウムがあり、鳥取まで出かけた。
「造るだけじゃ駄目」ということを分かっている、心ある関係者がいたからである。
後半にパネルディスカッションのようなものがあり、私(姫路出身)以外にも、沿道沿いに平福(兵庫県・佐用町)や智頭往来(鳥取県)の町並み保存をされてきた方や、鳥取市の地域づくりリーダー、鳥取に隣接した新温泉町(兵庫県)で「カニ・ソムリエ」を推進されている方など、「文科系」がズラリと揃った。両県にはさまれた大原町(=宮本武蔵が幼少時代をすごした場所=岡山県)からも関係者が来られていた。
キャスティングから読み取れるのは「プロデューサー」氏の、この道路開通を地域活性化の起爆剤にしたいという思いであり、そのために県や地方圏(中国と近畿)を超えた地域連携により観光振興したい、という夢であった。
現地に到着すると実際、道路、地域おこし、観光、歴史など多様な方々が多方面から集まっておられた。
しかしその分、「水と油」のような雰囲気もなきにしもあらず・・・だったので、自分からは以下のような話をし、会の狙いやそれぞれの関係を整理してみた。
①道路やハコモノ工事の関係者の多くは「造りさえすればいい」「できさえすればいい」と思っているかも知れない。だとすれば、それは大間違い。民間なら新たに鉄道や建物を造る場合、当然それをどう使ってもらい、自分の商売や地域を潤わせるかの方に大きな知恵を絞る。当然、これからの公共事業もそうあるべきだ。
②その部分をきちんと考えていかなければ、道路やハコモノが地域に大きなデメリットをもたらすこともある。「新直轄」なので地域負担の問題は少ないかも知れないが、千円でどこまででも行けるとなれば、まず3セクの鉄道経営がさらにきつくなる。また、便利になればなるほど、魅力的な場所で暮らしたい、またそんな場所に行きたいと思うのが自然。鳥取で買い物するより姫路の方がずっといいということになれば、高速道路がもたらすのは人口の減少や商売の衰退ということにもなる。
③それらの意味で、地域にとっての勝負はまさにここから。多くの人がいつまでも住み続けたい、あるいはいずれ帰ってきたい、さらには機会や情報があれば訪ねてみたいと思う地域を作るために、活用すべき素材として、ここでは歴史や自然環境を取り上げている。
④さらにこの会の狙いは、せっかくの機会だから、それらを活かしもっと道路や鉄道に沿って連携しないか、ということだと思う。もちろん、連携はあくまで地域活性化の「手段」である。例えばドイツのロマンチック街道協会は日本などの極東地域からの誘客促進をめざす連携組織だが、ローテンブルクやノイスバンシュタイン城などの個々の地域魅力だけでは、遠いところからの観光客誘致面でパリやローマにかなわない。だからこそ連携しようというという考え方に立っている。
⑤当地に関して言えば、姫路城から鳥取砂丘までを結ぶ高速道路や三セク鉄道に沿って、まちなみや旧街道、宮本武蔵、地酒・・・そしてゴールの先にはカニや温泉があるというのは「チーム」として悪くない。高速道路が完成する前に、道路や鉄道の利用促進策を考えていこうとされているのはまさに慧眼である。道路づくりに際し「期成同盟」みたいなものがあるなら、それを改組・拡大することを考えられてはいかがか? 一連の試みがもしうまく行けば、わが国でも初の事例になる。
翌朝(年度末最終日)の姫路・大阪経由京都行きの電車は満席状態だった。
通常旅客と思われる人たちに混じり、3分の1は家族連れなどの行楽客。で、残る3分の1は新しいスーツに大きなキャリーバッグをもった新卒社員と思わしき若者たち・・・であった。
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