(その1)中谷巌氏の「懺悔」
構造改革推進の論客で、小渕内閣の経済政策ブレーンでもあった中谷巌氏が、新年の「週刊朝日」で「懺悔」をしていた。
今の資本主義は以前と違い「グローバル資本主義」である。「グローバル資本主義」では貧しい国で作られた生産物を消費するのは、生産国の人々ではなくて欧米や日本人である。また、企業の生産部門は賃金の安い国をめがけて転々と移動する。
「グローバル資本主義」は世界経済を不安定化し、エリート層に都合のいい大衆支配や搾取のツールとなっており、「格差」は進展する。
また、「グローバル」化した企業は常に環境基準が緩い国を求めて移動するから、環境問題が好転することもない。
にもかかわらず・・・「改革」と称してこの方向に舵を切ったことを反省しなければいけない。
そう言って、中谷氏は自らの「転向」を声高らかに宣言するのであった。
(その2)グローバル価格
だが。
いかに中谷氏が「転向」しようとも、「グローバル資本主義」は別に滅びていく訳でも何でもない。「グローバル」な時代は今も続いているし、これからの基調もそうであろう。
そういった大きな流れの中、「金融バブル」の崩壊はただ、企業や国の利益のうち「まぐれ」な部分の清算を意味するだけである。
欧米人や日本人の所得が世界の人よりも高くて当然、なんて「まぐれ」も緩やかにではあろうが解消に向かい、やがては国籍とかは関係なく、個々人の技術やポジションに応じた「グローバル価格」ができあがるのであろう。
とはいえ、そういったことの一方で。
経済・雇用・仕事・収入などなどに関しては、逆境や不況感を受け入れていくことが前提だが。
少々の高みに立ってよく見れば・・・「結局のところ、対策としてはこんなこと以外ないのでは?」という方向が見え始めて来ているような感じもある。
「国のせい」「アメリカのせい」「企業のせい」「教育のせい」等々の・・・言い訳はいくらでもできるが、そろそろ皆で一定の方向を見据え、複合的に事態を緩和していくことが望まれるのではないだろうか?
(その3)セーフティ・ネット
経済・雇用・仕事・収入などなどに関し。
まず第1の課題は、「セーフティ・ネット」をどう確保するか? というものである。
日比谷公園の「年越し派遣村」が大きな話題を呼んだが、従来との大きな違いは、自らがホームレスになる可能性がこんなにも身近に感じられる社会になったことである。
そういった社会が、資本主義の発達や「改革」のあげくの果てにできたものであることも、注意していくべき点である。
全ての国民の基本的生活を、いわゆる行政の福祉政策だけで守るのは無理。
「企業の社会的責任に関わる法整備」(例:派遣契約を一方的に解除した場合にも○ヶ月間は寮への居住権は残る)や、「労働力の再配分に関わる国策」(例:都会から故郷・限界集落等への帰農促進)が必要であろう。
(その4)低コスト社会
関連し、長期的視点で目指すものとして、「低コスト社会の実現」がある。
日本社会の最もよくない点は、生活コストが高すぎること。
その一方では、リタイヤ世代、主婦、フリーターなど「時間がある人」が一杯いる。
「ボランティア貯金」等を通し、地域内で無償サービスを交換していくような方向を積極的に促進していくべきではないかと思う。
(その5)誰の消費を、どう促進するか?
次に、課題の第2は低調な消費をどう上向きにするか? というものである。
定額給付金のようなバラマキは最低の政策であり、2兆円なら2兆円はまとめて使うべきであって・・・民主党案や「いっそ地方に任せろ」という橋下発言は正しい。
だけど、2兆円で何をするか?については、もう少しマーケティング的な視点を交え、「誰の」消費を促進するのか、またその経済効果はどのくらい? みたいな話を考えていく必要があるように思う。
例えば、30代の夫婦に、これから家を建てたりして盛大に消費することを期待するなら、どんな政策が必要か? 税制面以外に、高校・大学を無料化するなどの方法で、将来の教育費を削減してあげることなども有効かも知れない。
(その6)定額給付金にまつわる「国民運動」
ちょっとブレイク。
定額給付金が出たなら出たでどうするか?
「爆笑問題」が年末の週刊ポストで、「1万2千円もらったら、国民みんなで麻生さんいきつけのホテルのバーで消費しよう」と言っていた。
・・・大爆笑。
昨日、自民党を飛び出た渡辺Jr、元・官僚の江田さん、あとは正体不明の本屋さんなぞが記者会見していたが。
「国民運動」として、本気で呼びかけて見ればいかがだろうか?
(その7)緑の公共事業
続く第3の課題は、これまでにあった就業機会をどう維持していくか? といった問題だろう。
ピラミッドを作って壊すだけでも有効需要は創出できる、と行ったのはかのJ.M・ケインズだが、例えば一定量の公共事業は、就労機会を確保するという意味でも必要である。
だがここで、どうせやるなら、アンチ・グローバル資本主義的観点からも・・・地球環境問題などいくつかのテーマに関わるものがいい。
緑の公共事業・・・多少のムダがあるとしても、この分野ならやりすぎることもないし、救いもある。
一例は、全国の学校の校庭を全て芝生化していくことである。PTAや地域が協力すれば、1件数百万もあれば一気にできるはずだし、一次産業の振興にもなる。
学校(文科省)、公共事業(国交省)、地球環境(環境省)、芝生産業(農林水産省)といった縦割り行政に横串を刺すといった意味でも、大きな意義があるように思う。
(その8)ワーク・シェアリング
さて、そんなこんなの中、先週末、経団連と連合が「雇用安定・創出に向けた労使共同宣言」を出した。
経団連会長の口から「ワーク・シェアリング」が持ち出されるなど、ちょっと前では考えられなかったことである。
例えば週休2日を3日に増やせば、5人で1人の雇用が創出できる。
のだが・・・問題はそれに伴う、給料の下げ幅。
労働時間が20%減るとしても、収入源は20%というのはキツイだろう。従って、1000万円以上なら最大15%、1000万までは10%、500万以下は5%・・・みたいな感じで早めに一律の下限を決めておかないと、入口でつまづいてしまうことになる。
よほどうまく詰めて行かないと、正社員からの反発でなるものもならなくなってしまったり、本来の意義から全く遠い形のものになったりするのではないかと危惧する。
(その9)もうかっている企業もある!
上の例で言う5-15%のギャップはどうやって埋めていくのか?
・・・労働側が痛みを取るなら、当然、企業や資本の側もそれを分け合わないと駄目である。
特にわが国には、密かに儲かっている企業というものが存在している。「金融不安」の一方では、幸いにしてガソリン等の急騰は収まり。また、円高メリットを享受している企業だって少なくない。
原料安や円高の影響を受た中部電力が非正社員の正社員化に踏み切ったというニュースが出ていたが、そういった企業群こそが「雇用の安定と創出」への貢献を果たさないと、消費不況がますます本格化するというものであろう。
以外にも、つい1年ちょっと前まで「史上最高益」とか言って威張ってた企業は少なくなかった。そういった企業には莫大な内部留保がある。
例えばトヨタの内部留保は13・9兆円とか。そういった大企業が真っ先に雇用カットをするのは、社会的責任の無視というものである。
加えて言えば、本当は「まぐれ」だったのかも知れないこの間の「好況期」について、経営陣の多くは本当に自分の手腕だと思っているのであろうか?
大手の役員給与は00年から2・3倍に、株主配当は03年から07年で倍増の12兆円になっている。ある電力系企業のトップは一介のサラリーマンであるにもかかわらず、10億円もの退職金として受け取った・・・といった「萎える」噂話すらある。
(その10)老いていく、団塊世代
中谷巌氏の新著「資本主義はなぜ自滅したのか」によれば、氏に「ある種の疑念が生まれてきた」のは今世紀になってからだという。
「新自由主義やグローバル資本主義はアメリカという特異な国で一神教を思想的基盤として生まれ、育まれたもので、歴史的・文化的基盤を異にする他国で国民を幸せにするとは限らない。それとは対照的に、氏が最近訪れたキューバやブータンでは、物質的には貧しくても人々が安心して心安らかに暮らしている。日本もかってはそうだった」
・・・かくして氏は「日本古来のよき伝統を回復するためにも、アメリカ型の市場原理主義から脱却すべき」と説くのであった。
そういったご説自体は間違っていないが・・・気づく人は何年、何十年前からそれに近いことは分かってたって(笑)。
若き日を「タイ・カンボジア国境」や「バングラデッシュ」で暮らし、中年になってからも「キューバ」や「ウガンダ」を旅したことがある私なぞもその1人で・・・何で今頃、声高に「新発見した!」みたいな言い方するの? と、感じてしまうのだが。
まあ、こういった人ですら「転向」するようになったことに1つの時代性というものがあるんだろうな。
この人は一体、賢明なのか馬鹿なのか? 少なくともあまり敏感な人ではないことは確かだが、若き日からの活動を知る者からすれば「一気に老いた」(笑)という感じかも知れない。
もしそうなら・・・爺さんの説教はもういいよ。
これからの日本はこうやって、よくも悪くも団塊+戦前世代の大先輩方の「老い」や「自己満足」、あるいは「先祖帰り」みたいな話につき合わされ、振り回され続けることになるんだろうな。
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