③黄泉の世界の入口

    救急車が来る１０分くらい？の間は、今にして思えば一番辛い時間だった。

救急車に乗ってしまえば、あとは輸血だの点滴だのの応急処置が可能だが、この時間だけはどうしようもない。

誰かが「胆石ですかねえ」みたいなことを言っているので、「な、程度のワケないだろー」と思いながら、目を閉じていた。

何度か気を失った。

黄泉の国に仮入国する際の国境は多分このあたりで、痛いとかきついとかということがあまりにも当たり前でどうでもいいことになってくると、ちょっとした油断で、意識自体がキープできなくなる。

ここ何日か、ミャンマ－で射殺された長井健治さんの映像を見ていたが、出血多量で死ぬ時というのは多分、こういう感じなんだろうなと想った。

救急車の中や緊急病棟に運び込まれる時には、「ああこれで何とかなる」「後の段取り含め自力で出来ることは全てした」という感じで、自分的には落ち着いていた。

住友病院は隣接するビルで、何度も来たことがあるので、「今、あのへんかなー」なんて考えながら、横になっていた。

　ちなみに病院到着時の血圧は７０にまで落ちていたそうである。